森博嗣「有限と微小のパン」

S&Mシリーズ第10弾,つまりは最終巻.
読了した夜(昨日)は,興奮してなかなか眠れなかった.


文庫なのに厚さ33mmもあって,1200円もする.
これまでに見かけた文庫のうちでは,京極夏彦の次に厚い.
些細なことかもしれないが今作の各章のタイトルは
すべて"Pan-"で始まる英単語だ.


とにかく真賀田博士の存在感が強烈.
博士が登場する場面での緊張感がたまらない.
860ページもあるのに全然長さが感じられなかった.
特にクライマックスからエピローグにかけての濃密な展開は
まさにシリーズの完結にふさわしい.
副題の"the Perfect Outsider"が
シリーズ第1作の副題"the Perfect Insider"に対応しているのも素敵だ.


真剣に謎解きを試みた人にとっては
トリック自体は腹が立つものかもしれないが,
それこそがこの作品のメインテーマなのだと思う.
ミステリーというよりも哲学に近い.


この先は短編集を読んでVシリーズ,「四季」4部作,最新のQシリーズ,
という順番で読むのが物語的に一番楽しめるらしい.
犀川先生と西之園萌絵の物語はこれをもって一段落したが,
あの世界の物語はまだまだ続くようだ.

有限と微小のパン (講談社文庫)

有限と微小のパン (講談社文庫)