村上春樹「東京奇譚集」

翻訳でもエッセイでもなく、
村上春樹の小説としての新作を読んだのは久しぶりだ。
(単行本が出たのは2年前だが・・・)
個人的に、村上春樹の短編集の表紙といえば"白い"イメージが強いので
文庫の表紙はちょっと"らしくない"印象を受けたのだけれども、
実際は心配することなんて何もなかった。
主人公をの男を"ヘンてこな人"かどうか確認する少女や

医師を揺さぶる石の意思

なるセリフ、区役所の人の微笑ましい公務員ぶりなど
村上春樹的ユーモアももちろん相変わらずで安心した。


昔の短編集は収録作品のうち1つの作品タイトルが
本のタイトルになっている場合が多かったような気がするが、
あえて"東京奇譚集"と冠されている。
しかしいかにも東京がテーマの短編集と見せかけつつ、
話がボストンから始まる作品や、
東京の場面がほんの後日譚にすぎない作品があったりもする。
ひょっとすると必ずしも東京という街を問題としているのではなく、
人が多く集まる場所ではこんな不思議なことも起こり得るんだよ、
という意味で"東京奇譚集"なのだろうか?

東京奇譚集 (新潮文庫)

東京奇譚集 (新潮文庫)