ドストエフスキー「悪霊」

これでドストエフスキーの代表的な長編は全部読んだことになる.


ロシア人は3通りぐらいの名前で呼ばれるので
登場人物を把握するのが大変だ.
例えば"ステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホーヴェンスキー"という人物は
単に"ステパン氏"と呼ばれる場合もあれば
"ステパン・トロフィーモヴィチ"(名+父称)と呼ばれたり
"ステパン・ヴェルホーヴェンスキー"(名+姓)と呼ばれたりする.
人物によっては姓だけ,あるいは名だけで呼ばれることも多く,
さらに愛称で呼ばれる場合もある.
おまけにシャートフ,シガリョフ,ガガーノフといった
似た語感の名前があって,よく混同してしまう.


「悪霊」の前半(上巻)ははっきり言って退屈だった.
主人公のスタヴローギンは半分を過ぎてからやっと出てくるし,
革命運動を扱った話だというのに,組織や檄文の話が少し出てくるだけで
革命に関係のある大きな事件はこれといって起こらない.


しかし,後半は一気に話が加速して,終始緊張感の漂う展開だった.
前半だけを読んで投げ出したくなったとしても,
少し頑張ってちゃんと読んだほうがいい.
肝心の革命は起こらないけれど,
一度流れに乗るとページを閉じられなくなる.


文学的にはスタヴローギンの告白の章に注目すべきところらしいが,
私にとってはステパン氏の出立の章が印象的だった.


ところでスタヴローギンとリザヴェータの会話

「リーザ!きのうはいったい何があったんだろう?」
「あったことがあったのよ」
「それはひどい!それは残酷だ!」

が何かの小説のエピグラフになっていた気がしてならない.
何だったろう?

悪霊(上) (新潮文庫)

悪霊(上) (新潮文庫)