カート・ヴォネガット「母なる夜」

どうも1度読んだことがあるような気がしてならない.
同じ本を2冊買ってしまったのだろうか.


ヴォネガットの小説には戦争を扱ったものがいくつかあるが,
これもその中の1冊.
重いテーマをユーモアを交えつつ軽い文章で書くところが
ヴォネガットの好きなところだ.
「難しいことをわかりやすい言葉で書くのが良い文章」
とは誰の言葉だったか.


ヴォネガット自身は世の中を随分と冷めた目で見ているが,
決して心底から人類に絶望しているわけではない(と思う).
明確にハッピーエンドとなる作品はほとんど無いのに,
どこか優しい雰囲気がある.


「母なる夜」においても他の多くのヴォネガット作品と同様,
主人公は自分の意図しない「何か」によって流されて
最後には色々なものがダメになってしまう.
個人の意思なんて現実の前には救いようもなく無力だ.
けれど多くの人間(私を含めて)は生きることをやめなくて,
やめるつもりも無く,人間は今も増えつつある.
それはなぜだろう?